私の登山記録

穂高の春2017(第1部)

 2017年の春の穂高。二泊三日の行程は2日目のみ好天に恵まれたものの、最終日は吹雪に見舞われ、穂高の厳しさを実感することとなりました。
雪の量は昨年と比べると大幅に増えて(ただし例年並み)おり、一安心といったところでしょうか。






 

10時17分
旅立ちはいつもこの横尾から。
もちろん上高地からの出発ですが自分にとっては横尾までは登山の要素がないので始まりは横尾です。

今日は沢渡の駐車場に到着した時点で雨。バスの始発時間になっても雨が降り止む気配が全く見られず。なので雨からのスタートです。横尾に到着することには雨は一旦止みましたが時々パラっと降ってきたりして安定していないのがよくわかります。

連休後だけあって人が少ないです。上高地から休憩なしで一気に歩いてきましたので休憩と朝食をとります。






 

10時38分
横尾から涸沢へ歩いて行くと岩宿跡があります。屏風岩をクライミングする人たちがここで宿泊したのだそうです。以前現役でこの岩宿を使っていたという方とお会いしたことがありました。

今日は岩宿周辺は雪で覆われています。この場所で雪が残っているということは情報通り例年並みの雪の量だということになりますね。






 

10時40分
さて、ここからが徐々に登山道らしくなってきます。想定以上に雪が残っていましたが対岸に渡るほどではありませんでした。所々雪が融けて地面が出ている場所もあり、「雪が多い」のではなく昨年が異常なほど少なかったのだというのがよくわかります。
しばらく雪山登山が続いたせいか、地面の上を歩くというのがなんとなく違和感を覚えてしまいます。






11時05分
さて、北穂高岳を見上げて見ると、これまたガスがかかっていて山頂は見えません。
今日は雨が降ったり止んだり。条件は良くありません。いつもならアンダーウェアだけで十分なのですが今日はソフトシェルジャケットを着ています。忘れたことにパラっと雨が降ってくるのもありますし、気温もそんなに高くないので動いているとはいえジャケットを羽織った方が良いです。






11時15分
本谷橋を超えた辺りから完全にスノーフィールドとなります。
ここでアイゼンを履きます。
それにしても春の雪は歩きにくいですね。「雪が腐る」とはよく言ったものです。厳冬期のアイゼンがキュッとめり込むあの感覚が懐かしいです。ま、気温が全然違うから当然ですがね。






11時37分
本谷分岐まで来ました。
ここからは左手に登っていきます。いつもは間違って直進しないようにロープが張ってあるのですが今日はありませんでした。ま、トレース見ればすぐわかると思います。ちなみに直進した場合は大キレット下部に行ってしまいます。

分岐して左側に登っていく部分はアイゼンない場合慣れていないと難しいです。とりわけ降るときはズルズル滑るので注意が必要です。私は最初からアイゼンをつけていますので普通に上がっていきます。






11時53分
しばらく登っていくと崩落現場に遭遇します。見事にルートを直撃しています。こんなものに巻き込まれてしまってはひとたまりもありません。後ほど涸沢小屋のスタッフと話した時に、ここは昨年6月ごろに崩落したのと同じ場所だとのことです。
そういえば昨年の夏に来た時に崩落があり小屋のスタッフの尽力で速やかに修復され通れるようになったということがありました。

今日も見ていると大きな岩がゴロゴロ落ちて来たりしていて危険を感じずには入られません。当然ながらこの部分は迂回する措置が取られてます。






12時00分
迂回路を進みます。迂回路は涸沢に向かって右手の斜面を迂回する形になっています。こんなことでもない限り踏み入れることのない場所ですのである意味貴重な体験でもありました。ただし急な斜面を登っていくので面倒ではありますが命にかえることはできません。

山荘スタッフの迅速な対応に感謝したいと思います。同時にこの時期の登山というのは本来であればこういったリスクが散在するのだということを改めて実感しました。






12時09分
崩落現場を無事に通り過ぎた後はいつも通りの冬道を淡々と登っていきます。
わかってはいますが春の雪を長距離登っていくというのは疲れます。しかも迂回路を通るなど余計な体力を消費しているので徐々にペースも落ちて来ます。

直射日光に晒されないのがせめてもの救いでしょうか。時々吹き付けてくる風がむしろ心地よいです。
今回はあえてトレッキングポールを持って来ていません。ポールなしで春の雪道を登っていくと時々バランスを崩しそうになります。普段いかにポールに頼りすぎているのかということがわかります。あくまでも補助ですからね。良い訓練になりました。






12時32分
涸沢ヒュッテが見えて来ました。ただし見えただけであって、ここからが長いのはもう身に染みてわかってはいます。いつだかも書きましたがグリム童話の中に出てくる魔女の家を思い出します。魔女の家がすぐそこに見てるのにいくら歩いても歩いても到着しないという場面がありましたが、そんな気持ちになってしまいます。いやもちろん涸沢の山小屋は決して魔女の家ではありません。

涸沢ヒュッテも半分雪の中に埋まっているというイメージです。
本来この絵を撮るとバックに穂高の峰々が映るのですが、今日は全く見えません。初日はダメですね。涸沢小屋のテラスで大の字になって寝るというのは無理そうです。






13時20分
本日の宿泊となる涸沢小屋へ到着。
かなりキツかったです。横尾から休憩なしで上がって来たということもあるでしょうし、春の腐った雪をポールなしで歩いたのでバランスを保つために余計な筋肉を知らず知らずのうちに使っていたということもあるでしょう。

アイゼンを外し受付に行ってチェックインします。そしてなんと驚くべきことに、本日の宿泊者は1名、私のみ。
厳冬期の西穂山荘で宿泊者2名とかはよくあったのですが、それでも一人だけということは未だかつてありませんでした。ですが今日は本当に1名のみ。しかも名だたる穂高の山小屋で貸切状態。すごいですね。天候の関係もあるとは思いますが連休との差がありすぎです。






13時36分
今日は寒いので室内で生ビール。この一杯がたまりません。途中で喉が渇いたのですが「ここで水飲んだら生ビールが台無しになる」と思い我慢に我慢を重ねて来ました(本来ならきちんと水分補給すべきです)。

この一杯が最高です。今までの疲れが一気に吹き飛んでしまいます。そしてカレーもいただきます。山小屋で食べるカレーってどうしてこんなに美味しいのでしょう。

ゆっくりしながら明日の行動を考えます。複数のソースを統括すると明日は概ね期待できそうな天気のようです。やはりこういう時に気象予報士というのは重要なんだなと思います。早く自分も明日の気象条件の予想が立てられるようになるといいななんて思ったり。






涸沢小屋のテラスからテント場を眺めます。
連休中は約350張もあったテント場も今日は数張程度しかありません。テラスから眺めるこの光景が私は好きです。今日は天気が悪いのであまりよくありませんが、天気が良い時は春ののんびりした暖かな涸沢でそんな景色を見ながら一杯やるのが最高なんです。






本来なら前穂高岳や吊尾根が見えるこの角度の写真も今日は厚い雲で覆われていて何も見えません。ただこうやって改めて涸沢を見てみるとあらゆるところで雪崩後(デブリ)が見られます。異常なほどの高温が続いたためそこら中で雪崩が発生しているとは聞いていましたが危険な状況ですね。






さて、夕食の時間になりました。たった一人の宿泊者のためにこんな豪勢な夕食を提供していただき感謝に耐えません。美味しくいただきました。
ただ、広々としたランチルームで一人ポツンと夕食を黙々と食べるのもなんとなくオツな感じですね。






食後テラスに出て空を眺めると常念岳方面は青空が見え始めていました。この分だと明日は期待できるか?などと思いますが、しばらくするとみぞれが降って来たりして山の天気は読めないなと感じます。
ま、今どう考えようと明日になって見ないとわからないので明日の好天を夢見て就寝することにします。






07時47分
翌朝です。部屋の中に朝日が差し込んでいます。天候が回復したようですが稜線はまだ雲がかかっています。朝食を終えてしばらくゆっくりします。再度見上げて見ると稜線にかかっていた雲もなくなり絶好の気象条件になりました。
準備を済ませいざ稜線に向けて登ることにします。






07時56分
今年もこの絵が撮れました。
やはり真っ白な涸沢は魅力的です。昨日の道中にあった人から考えるとおそらく今涸沢にいる登山者は10名もいないのではないかと思います。その中でも奥穂高岳へ向かう人は数名程度ではないでしょうか。とにかく前にも後ろにも人がいません。
新しいトレースがついていますので誰かが先行して登っているのは確かですが決して大人数でないことは確かです。
 
雪が緩んで来ているのがわかります。崩れるほどではありませんが慎重に登っていきます。今日は素晴らしい頂上が期待できるでしょうか?
 
期待を胸にしまいながらまずは稜線を目指して登っていきます。
 
 
記事は第2部へ続きます。
 
 
第2部はこちら 
 
 

第2部予告
苦労して登った稜線でみた衝撃的な光景とは?
そして下した結論とは?
穂高岳山荘で迎えた朝の稜線、そこは季節が逆戻りしていた? 



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