冬の西穂(2012年12月)第1部
今シーズン最後の冬山登山です。
今回はフィナーレにふさわしい荘厳な内容となりました(って少し大袈裟な表現ですが・・・)
苦しく、辛く、恐怖もあり、しかし登頂したその瞬間思わず涙が止まらなくなりました。
初日は天候に恵まれずただ西穂山荘に向かうだけにしました。通常だと初日に丸山まで行くのですが、ホワイトアウト寸前だったということもあり、山荘でくつろぐこととしました。
今回の山荘宿泊者は非常に人数が多く、いつものこじんまりとした感じではなかったので自分的にはちょっと居づらかったかな。
06時15分
翌朝は予報通り快晴でした。すでに何組もの方が先発しており、きっちりとトレースを付けてくれています。私的にはお弁当にして早朝に出発し、日の出を見ながら登ろうかと思っていたのですが、当初の予定がピラミッドピークだったのでそこまで急ぐ事はないかなと思い、しっかりと朝食をいただきました。
そうなんです。当初の予定はピラミッドピークだったんです。
06時35分
まずは丸山です。この時期の山荘の朝食時間は早く05時30分で食後すぐに飛び出してきたので、当初の予定と比べてわりと早い時間にここを通過できました。
森林限界を超えるとこの時期でも風は強いです。でも1月、2月と比べるととても柔らかな風の吹き方でした。春なんですね。
07時25分
そして、独標頂上直下までやってきました。
ここまで全く問題なし。ただ、雪の量は前回より多くなったように感じます。多分昨日想像以上に降り積もったんだと思います。しかーし、そこは先発した方々がトレースを付けてくださっているので楽させていただきました。
実は、今回プロガイドの方とそのクライアントの方が西穂高岳登頂でいらっしゃっていました。今回はこの方々が最後までトレースを付けてくださっていたおかげで、西穂高岳まで登頂できた(する気になった??)のでした。
さて、頂上直下の岩峰地帯になったところで、アイスバイルに切り替えます。本来ならピッケルで十分なのでしょうが、この登攀道具をどうしても使ってみたくって、独標手前から雪面にガツガツ突き刺しながら登って行きます。
07時35分
独標登頂。
けっこう人がいました。7、8名はいたでしょうか。
さらに登ってくる人が確認できたので混雑する前に先へ進む事にします。
07時38分
これから登る峰々がよく見えます。前回は氷の世界というイメージでしたが、こうやってみて見ると雪の穂高という感じがします。なんていうか柔らかいとでもいうか・・・
08時07分
第10峰に登りました。9峰を過ぎる辺りまで結構ギャラリーが多かったです。中には独標から西穂高側に下りる人も居たのですが、すぐに引返したりしていました。
晴れていると隣の峰がすぐ近くに見えます。
08時19分
そして気がつけば第9峯の手前まで来ていました。
一番左側の雪庇が強烈に張り出している部分は10峰と9峰の間にあるコブです。
08時19分
ここから一瞬だけ普通に歩ける部分があります。写真でも何となく道が分かると思います。
ピラミッドピークがだんだん目前に迫ってきました。「これはいける!」とわくわくしてきました。何と行っても先行者がいるというのが非常に心強いです。天候も雲一つない晴天。時間も余裕あり。ここで引返す理由などありません。
08時39分
ピラミッドピークのこの地点の手前はかなりの斜度で足を踏み込むと踏み込む前よりも下まで雪が崩れるような状況でした。一瞬妥協しかけたのですが、ここで下りたんじゃ一生悔いが残ると思い、必至に崩れる雪と格闘しながら登ります。
「諦めるな!!」そう自分に言い聞かせながらもがいて、苦しんで、息を切らせながら、必至に登ります。
そしてやっと写真の少し広い地点まで登る事ができました。
08時39分
振り返ると相当高度が上がっているのだというのが見て取れます。左下の峰が独標なのですが、信じられないですね、いつも下から見上げているあの独標を今は上から見下ろしているんですから。
「上から☆リコ」な気分です(ってどんな気分だー)
08時43分
さて、ここでザックをデポすることにしました。
ザックは20キロ近くあり体力的にこれ以上ザックを担ぐのは無理だとの判断です。
そうなんです、私の目標はあくまでも奥穂高岳。そのためにはこの重量物を頂上まで担がなければなりません。なので私にはザックを軽くして登るという概念そのものがありません。
ただ、今回は自分の基礎体力の無さゆえにやむを得ずここで身軽になる事にし、アイスバイルのみを持って行く事にします。
08時52分
ピラミッドピーク登頂。
ピラミッドピークって意外に広いんですね。もっととんがっているのかと思ったのですが。
それにしても感激です。ついに登る事ができたんです。この道標が見えた瞬間、走り込んでしまいました。そして一人で飛び跳ねて嬉しがりました。独標方面を見るとはるか下のほうで昨日一緒のテーブルで食事して話した方々が手を振ってくれていました。こちらも負けないくらい全身でアピールします。
しかし、
ここに来て初めて見えてくる第7峰〜主峰を見た瞬間、目的を達成したので引返すという考えは頭の中から一切消え去りました。
「行ける」
次の瞬間、第7峰へ向かう自分がいました。
2012年3月29日
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