夏の穂高連峰縦走2012(第3部)
登山道で2時間の行程というとそんなに大事のようには聞こえない・・・
しかしそれが穂高連峰の縦走となると全く別の話。北穂高岳から涸沢岳の縦走という非常に難易度の高いコースを含む3日目は、この時期にしては貴重なモルゲンロートをもって始まったのでした。
04時58分
日の出の赤い光が穂高の峰々を赤く染める「モルゲンロート」という現象。時期によってはもっと燃えるように真っ赤になるのでしょうが、この時期にしては上出来ではないかと思います。
本当は昨日蝶ヶ岳の山頂からこの現象を見たかったのですが・・・
07時30分
北穂高岳は最初は普通に登って行くのですが、突然スラブ状の岩をよじ上って行くような場面に遭遇します。初めて来る方は必ず動揺するのではないでしょうか(・・・ってカッコつけるな〜)。
何はともあれ私自身が最初に北穂高岳に登ったときにびっくりしたのでした。
08時05分
緑が美しいです。まさに夏山って感じですね。
北穂高岳はこういった、のんびりした一面もあるんですね。
08時33分
かと思えば、ロッククライミングかよ〜、と思わせるようなビックリゾーンが予告なしに突然出てきたりと何かと変化に富んでいるんですね。
09時08分
周囲の山が自分の目線に近くなってきました。
この頃になると歩き方も注意しないといけないです。若干ではありますが酸素濃度に変化が現れるころなので、無駄な動きをなるべく避けるようにします。呼吸も長く、ゆっくりするようにします。気がつくといつもより呼吸が荒く(早く)なっているのが分かります。
10時31分
北穂分岐です。北穂高岳北峰(いわゆる北穂高岳の頂上、北穂高小屋があるほう)と北穂高岳南峰を経由して奥穂高岳への分かれ道です。
まずは北峰に向かいます。
10時36分
北穂高岳北峰へ向かうとすぐに雪渓を横切ります。この時期にこんだけ雪が残っているのも珍しいです。
山荘の方の尽力により整備されていますので、冬山装備がなくても普通に歩けます。でも気をつけないと転んでしまいそうです。
11時01分
北穂高岳登頂。
が、ご覧の通り残念な状況でした。
でも、このときは頂上からの景色より、これから挑む涸沢岳までの縦走のことで頭が一杯でした。
北穂高小屋でさっさと休憩を済ませ、先ほどの北穂分岐まで戻ります。
11時24分
北穂分岐から奥穂高岳方面へいくといきなり難易度が高くなります。
進むべき方面に丸印がついているのですが、「え? こっちなの?」とびっくりするようなことも。「崖じゃん」と思いつつよじ上って行くと、更にあり得ないところに丸印が付いていたり。もう笑っちゃいます。
11時31分
道標がないので分からないのですが、おそらくこの近辺が北穂高岳南峰だと思われます。
さて、ついに今回の北アルプス縦走の核心部分の始まりです。
11時33分
まずは「滝谷ドーム」と呼ばれる峰(写真右)が出現します。この峰には登らず涸沢側(写真で言う左側)を巻いていきます。
12時04分
滝谷ドームを超えてしばらくいくと、難所である奥壁バンドがはじまります。この両側に数百メートルもスパッと切れ落ちた稜線を超えて行きます。
正直言います。「怖いです」。
落ちないように岩をしっかりとホールドする両手首は灼熱の太陽によって容赦なく焦がされて行きます。いわゆるスローモーションの火傷です。
12時13分
奥壁バンドを少し進みました。
何とか写真を撮れる場所が合ったのでそこから一枚。もちろん左右は絶壁です。
12時15分
左側は崖です。落ちたら涸沢の下まで滑落は確実。足下はご覧の通り不安定。鎖も付いていないので、岩を必死で掴みながら慎重に行きます。
そう、涸沢は例えれば「おわん」のようです。上に行けば行くほど垂直になっていきます。そして今はその一番頂点にいるわけです。
12時40分
今度は滝谷側を進みます。
急に霧に包まれたので視界が悪くなり高度感がなくなります。良いのか悪いのか分かりませんが。ただ、下が見えないというだけで絶壁のただ中にいるという事実は変わりませんので・・・
13時12分
奥壁バンドを超えると一気に下りになります。下りきって小さな峰を超えたところが「最低のコル」です。とんでもないところにいるのは事実ですが、なんとなく安心感がある不思議な場所です。
13時23分
そして、最後の難所です。
どこから登るんだ〜 って叫びたくなります。ほぼ90度の崖を連続する鎖とハシゴをたよりに登って行く危険地帯です。
ここでカメラをザックの中にしまう事を決意します。この写真は一眼レフの望遠レンズ付きカメラで撮影しており、この重量物を首からぶら下げて歩いているのですが、この状態で写真の崖を登っていくのは不可能と判断しました、っていうか崖の途中で撮影などする余裕は無いです。
正直言います「めちゃくちゃ怖いです」
でもこの危険地帯を通過すればついに涸沢岳に到着します。
あまりの恐怖感に鎖を握る手が汗ばんできています。汗ばんだ手で鎖を持つ手が滑ったら、明日の新聞に自分の名前が載っている事でしょう。絶対に周囲を見ないようにします。常に進行方向だけを見つめます。
涸沢岳は標高3,103mですので、空気も薄くなり始め疲れやすくなります。恐怖で息が荒くなっているのか高度のせいなのか分かりませんが、低酸素での呼吸法を思い出しながら、呼吸を落ち着かせながら登ります。
14時43分
そしてついに難所を登りきりました。
写真右側から登ってきました。涸沢岳は写真の手前へ歩いて行きます。
14時56分
涸沢岳登頂。
達成感というよりは「終わった」という思いが強かったです。多分あまりにも刺激が強すぎたので北穂高岳から涸沢岳の縦走を成し遂げたとうことが実感として湧いてこないのかもしれません。
穂高岳山荘側からくると何の問題も無く登れるし、「奥穂高岳に登るついでに登っちゃいました」的な方々が頂上に集合していました。
北穂から縦走してきた人は何人かいたのですが、皆が賞賛の言葉を浴びていました。そうしていると「そうか、縦走してきたんだよな」と少しづつ実感が湧いてきたような気がします。
15時25分
残念ながら再び山頂は霧に包まれてしまいましたので奥穂高岳とジャンダルムの勇姿を見る事ができませんでした。
しばらく山頂で霧が晴れるのを待っていましたが、晴れる見込は無いので、穂高岳山荘へ下りて行きます。
今日の穂高岳山荘は想定外の大繁盛。小屋泊りの予定を急遽テント泊に変更しました。それでも山荘のスタッフの皆様は笑顔で接していて感激しました。この笑顔にどれだけの登山者が元気づけられることか。
もともとテントが設営できる場所が少ない上に、自分と同じテント泊に切り替える人も多くテント場も大混雑。ヘリポートまでテントのために解放していました。自分もさっさとテントを設営し、夕日も望めないので食事をしてすぐに寝てしまいました。
2012年7月27日
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