私の登山記録

冬の西穂(2016年3月12日)

今シーズン3回目の西穂アタックです。

初日、ロープウェイ終点から見た西穂高の稜線は申し分ないコンディション。青い空と白い峰々。ロープウェイから山荘までの道のりはとても明るくて、なんとなく春を感じさせる雰囲気でした。
ところが昼過ぎになると雲が出始め、独標近くになると完全に雲の中に入ってしまい、前回と同じような状況になってしまいました。第10峰まで進みましたがこれ以上先に行ってもあまり意味ないので、初日は第10峰で引き返してきました。

例のごとく地酒を飲んでまったりしたひと時を過ごします。
明日の天候をチェックすると、なんと穂高連峰の真上に高気圧が張り出している予報になっています。これは期待できそうです。

食後のアルコールは我慢し、早めに就寝します。今回は出発前に仮眠していなかったせいか、布団に入ると同時に爆睡してしまいました。






05時45分
起きると外から「わ〜、快晴だよ〜♡」と言う黄色い声が聞こえてきます。
早速外に出てみると、雲ひとつない快晴です。予報通りのようです。5時30分からの朝食を手早く済まし、ご来光を撮影するために急いで準備します。
気温は氷点下10度。しばらく停滞するので防寒具を思いっきり着込んでご来光を待ちます。






06時06分
この時期は日の出の位置がかなり左のほうになりますので、山荘前からだとちょうど木に掛かってしまいます。
山荘前の丘を登ったところからだとよく見えそうですが、今回は木の中から登ってくるご来光ということでご勘弁を。。。






 06時33分
朝の支度を済ませ、いよいよ2日目の登山を開始します。
この時間ですので雪はしまっているようです。みんなの歩くアイゼンの音でわかります。それにしてもこの青空を見るのは2014年の2月以来のことになります。
やはり3月になると天候も安定してくるのでしょうか。






06時41分
山荘裏手の丘をひと登りして振り返ってみます。
手前に焼岳、後ろの方には乗鞍岳が見えます。
今日は雲海が出ていないので、上高地までしっかりと見えています。また驚くべきことに今日は風がまったくありません。「風が・・・、風が止まった」ってどこかで聞いたセリフですが、通常ですと晴天でもこの時間帯は多少の風が吹くものですが、今日は無風です。独標近くになって初めて吹いてきましたが、それでもいつもの風と比べるとまったくおとなしいです。






06時45分
そして山頂側を見てみると、今シーズン一番の眺めです。
この写真はHP用にダウンサイズしているのでわからないのですが、すでに独標に登頂している人やちょうど独標に取り付いている人、丸山にいる人と丸山から先の稜線を登っている人が写っています。
 
今朝の朝食(5時30分)を食べてすぐに稜線に向かっていった人が何人もいたので、食後すぐに登れば速い人ならこの時間に独標に登頂できるのかもしれません。ちなみに朝4時ごろ起きでヘッドライトつけて登った方々もいた模倣です。






06時51分
丸山に到着。後ろにそびえている笠ヶ岳とその稜線がとても美しです。なんとなくですが厳冬期の稜線というよりも春の優しい稜線というイメージを感じるような気がします。個人的には厳冬期の凜とした姿が好きなのですが、これはこれでまた良いものです。

丸山の道標を三脚代わりにして自撮りなどして少し遊んだりします。ご覧になってお分かりのように丸山だけ道標のてっぺんが平らなんですね。なのでここにカメラを置いてタイマー機能を使えば自撮りが可能なわけです。独標とか山頂は道標のてっぺんがとんがっているので難しいです。






07時08分
丸山をすぎると斜面を延々と登っていきます。この部分が一番体力を使うかもしれません。雪の状況によっても疲労は全然違います。今日は朝早いということもあって雪が締まっていて登りやすいです。これが、雪が緩んで足元が不安定だと疲労が2倍くらい多く感じてしまいます。
今回の勝負は独標から先。なのでここは言うなれば前哨戦。無理せず60%程度でゆっくり登っていきます。






07時22分
丸山から先の稜線を登ると、独標がだいぶ近くなります。その左手には朝日が当たったピラミッドピークが威風堂々とそびえています。

ちなみに今回は稜線上ではピッケル(独標から先はアイスバイル×2)にしています。独標手前の第12峰まではトレッキングポールを使っていたのですが、山荘の公式でそれだと万が一滑落した時に止まる手段がないのでピッケルを使用するように注意されていました。考えてみるとその通りです。雪の状況によってはツルツルに凍っている時もあるわけですから。

過去の投稿で「独標手前まではトレッキングポールを使いました」と書いてきましたが、あまり適切な表現ではありませんでした。訂正してお詫びします。






07時44分
独標直下まできました。すでに多くの人が登頂しています。

独標の手前(山荘側)は一度左にトラバースした後、右上に登っていき、クサリを経由して登頂するのが正規ルートですが、今回右側の岩をよじ登っていくルートでトレースができていました。このルートですとショートカットにはなるのですが、一部ハイマツ帯の上をズカズカ歩いていかねばならず、私的にはあまり好きではありません。
今回もちゃんと正規ルートを登っていきます。もちろん正規ルートにもきちんとトレースができており、かつ雪もしっかり締まっていてとても楽でした。






08時00分
西穂高岳独標登頂。
素晴らしい眺めです。雲海もなく麓まで一望できます。多少風が出てきていますが、むしろ心地よいくらいです。今日のような気象条件だと暑くなるのはわかっていので、かなり薄着でいるのですが、それでも汗ばむ陽気です。

さあ、ここからが西穂高の稜線を象徴する岩峰の始まりです。現在第11峰。山頂(主峰)まで、大小11の峰を越えていくことになります。気合を入れて進むことにします。






08時03分
お隣の第10峰です。
岩の部分を登っていきます。
写真で見るとなんだかすごいところのように見えますが、実際すごいです。山荘のHPでも初心者は絶対に立ち入らないようにと警告されています。
今回は写真の第10峰の飛騨側が一部氷になっていました。バイルの刃を突き刺すことができる場所もありましたが、悪くすればアイゼンの刃も効かずにズルリと滑ってしまう可能性もある状況でした。






08時14分
第10峰に登頂し、独標を振り返ります。
人にもよると思いますが、冬季の独標は写真の山頂側の方が登り下りが楽です。何年か前に山頂側の斜面が整備されたのですごく楽になりました。
この時間は宿泊した人しかこれませんので静かなものです。独標には誰もいません。とても良いですね。






08時14分
こちらがお隣の第9峰です。
独標から第9峰までの間がかなり難易度が高いように思います。そこから先も気を抜けない箇所が続きますが、意外のこの間は慣れていないと苦戦する箇所です。

第10峰を山頂側に降りるときに左から巻いていくルートと右側からストレートに降りるルートがあり、冬季はどちらからいくのが正解かわかりません(正解がどちらかというより雪の条件等により自分でルートファインディングするべきなのかもしれませんね)。登る時は左側から巻いて行きました。ホールディングする箇所はたくさんあるものの、断崖絶壁をトラバースしていくような状況で、アイゼンやピッケルを装備している冬季には不向きのように感じました(個人の見解です)。降りてくる時は右側からストレートに上がって行きましたが、何の問題もなく簡単に登れました。

私の記憶では左から巻いて行った記憶がないので、雪の状況がよほど酷くない限りは今後も右側からストレートに上り下りすると思います。






08時26分
第9峰に登頂しルートを見ます。
お次は第8峰「ピラミッドピーク」。山荘裏手の丘を登ったところから見える一番目立つピークです。ルート的にはそんなに難所ではありませんが、一部雪壁を登る部分があります。独標の最後の部分に似た感じがあるかもしれません。雪質が悪いと崩れてしまい非常に苦戦する場所です。

今回はこの雪壁は割と締まっているほうで登りやすかったです。

ただ下山時にこの雪壁を降りている途中のことでしたが、真ん中あたりまで降りてきた時に、私が降りているにもかかわらず下から上がってくる登山者がいました。どうすることもできず、横にそれたのですが誰も手をつけていない場所でしたので、アイスバイル2本突き刺してアイゼンを蹴り込んでも、ズルズルと落ちてしまい大変危険な状況にさらされました。

「こんな場所ですれ違えませんから先行者が降りるまで待ってくださいよっ」て怒鳴りたかったのですが、こんなところで喧嘩してもしょうがないので、こういうマナーのない人もいるんだと思い、人が多い稜線上での危険性を改めて実感しました。登山は登り優先とでも考えたのでしょうか。それとも気付かなかったのか? あの状況で上から降りてくる人に気付かないというのは別の意味で心配です。酸素濃度も薄くなっている標高ですから。他にも第12峰手前で堂々と立小便をしている人もおり、せっかくの好天気での登山がこれらのマナーのない者の行為により台無しにされました。






08時37分
ピラミッドピーク直下です。ここを登ればピラミッドピークです。
遠くから見ても、そしてその名称からもわかるようにピラミッドピークの頂上付近は斜度がキツクなり高度感もかなりのものとなります。雪質が悪ければ地獄のような場所と化してしまいます。
幸いここでも雪質は最高でしたので安心して登っていけました。この部分を登っている姿は下の方からもよく見えますので下手な真似はできないと思うとさらに緊張してしまいます。






08時45分
ピラミッドピーク登頂。
2014年の時もそうでしたが、雪が少なく岩の露出が目立ちます。ここまで来て初めて西穂高岳稜線の後半部分が目視できるようになります。すでに第4峰(チャンピオンピーク)に登山者がいるのが確認できます。
風もほぼ無風に近く雪質もよく、条件的には最高の条件です。天候は最高だったのですが、雪質が悪くここで中止したのが2014年の2月でした。今日は先に進めそうです。






08時54分
お次の第7峰です。
第8峰がピラミッドピークなら、こちらはピラミッドを縦に二つに割ったような形をしています。トレースをご覧になってもわかるように、滑らせたらアウトな場所ですのでとにかく緊張感が高まります。斜度が半端ないです。
この第7峰は頂上付近のルートが夏季と冬季では若干異なっています。夏季は少し巻くようなルートになっておりクサリも設置されています。冬季は雪が付いているおかげで峰の真上を超えていくルートになっています。帰り降りるときに間違えやすいので注意した方が良いかもしれません。






09時05分
第6峰到着。
第7峰の山頂側の部分が少し面倒ですが、特に問題もなくすぐに第6峰に到達します。右側の奥の方に西穂高岳が見えますが、まだまだ距離はありそうです。
第12峰からカウントしますので、ここでちょうど半分ということになります。






09時05分
こちらが次の第5峰です。
第5峰は巻いていきます。ここを登れと言われたら泣いちゃいます。写真でも下の方に巻いていくトレースが写っているのがわかるでしょうか?
ここから先は急斜面をトラバースすることが多くなり、失敗は許されない場所になってきますので雪の状態によっては命にもかかわる状況となり、慎重な判断が求められます。
一言で「斜面をトラバース」と言ってもかなり緊張感があります。横歩き(カニさん歩き)をするほどでもありませんが、それでもごく一部で横歩きした部分がありました。






09時14分
第4峰(チャンピオンピーク)に向けた急登です。
とにかくバランスを崩さないように慎重に進んでいきます。幸い距離的にはそんなに長くないので、ゆっくり自分のペースで進んでいきます。ここまでくると高度もかなり高くなりますので、息切れしやすくなっています。
岩場が連続するこの稜線の中で少しホッとできる数少ない場所の一つでもあります。






09時23分
チャンピオンピークに登頂し、振り返ります。
さすがにこの高度まで上がると景色も違ってきます。
乗鞍岳には雲がかかってきていますが、それでも上高地を取り巻く峰々が一望できます。こうやって写真をゆっくり撮っていられるような場所ではないのですが、あまりの絶景に頑張って撮ってみました。

第4峰から先に進むためには、すぐに垂直に下りた後トラバースしていきます。この降る部分もルートファインディング能力が試されます。岩の部分を降りていくか、雪の状態が良ければその横の雪の部分を降りていくか。今回は雪の状態が良かったので雪の部分を降りて行った人が多く、私もトレースを利用させていただきました。






09時30分
第3峰です。
この峰も巻いていくか、峰を超えていくか、その時の状況で判断しなければなりません。こうやってみていると、巻いていくと一部苦労しそうな場所があるように見えますので、雪質のことも踏まえ、峰を越えていくことにします。どちらにもトレースがありますのでその人の判断によってまちまちなんだなと思います。

実際に私的には峰を越えて行った方が楽でした。上り下りはありますがヒヤヒヤしながらトラバースするよりは精神的にも楽です。






09時42分
第3峰を越えた後も、トラバースは続きます。しかもトラバースする斜面の斜度は一段と角度がついてるように思えます。ここで足とグキッて挫いてしまったら即バランスを崩して滑落してしまいます。この斜面は左下の方へずっと谷底まで続いていますから、初期段階で滑落を止められなければ命の保証はありません。
バランスを崩さないように、そして足元に細心の注意を払いながら慎重に進んでいきます。






09時53分
ここはそんなに難所に感じなかったのですが、雪の量の違いでしょうか、今回は想定外に苦労しました。写真の右上の方にステップができているのがわかるでしょうか。あの部分から登ることになります。
ここで先行者1名とすれ違います。
あともう少しです。頂上はすぐそこにあります。今回は時間的にも相当ゆとりがあります。今までで一番早い時間に到達できたのではないかと思います。それだけ雪のコンディションが良かったものと思われます。






10時00分
そして、西穂高岳最後の難関です。この長い斜面を登りきった先に、栄光の登頂が待ち受けています。過去の記録を見ても10分程度で登れることはわかっていますので、落ち着いてゆっくり取り付くことにします。

とにかく雪の状態が良く、アイスバイルやアイゼンの刃が気持ち良いくらいめり込んでくれるので、絶対的安心感に支えられながら3点確保で確実に登っていきます。だんだん頂上が近くなってきます。ワクワクしてきます。






10時11分
西穂高岳登頂。

ついにやり遂げました。これで冬季西穂高岳登頂は3度目となりました。

今シーズンは天候に恵まれず、登山口にすらいけなこともあり「こんなシーズンもあるよね」と自分なりに言い聞かせていましたが、見事に山は心を開いてくれました。
青い空に白い峰々。まさに絵に描いたような素晴らしい光景が広がっていました。

こうやって冬の西穂山頂から眺めていて、何か難しいことを考えているかというとそうではなく、単に「山っていいな」ただそれだけです。






ジャンダルムの勇姿が目に飛び込んできます。
この時期にあの峰に立つことができる人はほとんどいないでしょう。
春〜秋の時期は奥穂高岳の山頂より反対側から見ることができます。どこから見ても絵になりますね。白く雪化粧したその姿はまた美しいものです。






槍ヶ岳が見えます。サイズダウン前の画像を拡大すると槍の穂の左下に雪をかぶって真っ白になった槍ヶ岳山荘が写っています。槍ヶ岳に登頂したのは2013年の秋。もう2年半以上前になるんですね。
今はすっかり雪の下になっています。






今まで登ってきた稜線が見えます。こうやって見ると、よくあんなところ登ってきたなって感心してしまいます。帰り大丈夫か? ちょっと不安を感じてしまいます。

それにしてもいい景色ですね。


さて、下山を開始します。
やはり一番緊張感があるのが斜面のトラバース。

第8峰まで降りてくると、今日は週末で好天ということもあって登山者が続々と独標に向かって登ってくるのが見えました。半端ない人数です。早い人とは第8峰付近ですれ違いました。

独標まで降りてくると、もう危険なところはありませんので(人にもよります)、安心します。安心したら緊張感がほぐれたためか今度はお腹がすいてきました。「山荘でカレーとラーメン食べる」と思ったら余計にお腹すいてきてしまいました。

「カレー」「ラーメン」「カレー」「ラーメン」って言い聞かせながら丸山上部の広大な稜線を延々と下っていきます。たくさんの登山者が登っているので、はっきりとしたトレースができていて、いいのだか悪いのだかわかりませんが楽させていただきます。たくさんの登山者たちとすれ違いました。

山小屋は予想通り混雑していました。
すかさずカレーとラーメンを注文。あっという間に平らげ、ちょっと仮眠します。13時すぎに西穂山荘を出発しロープウェイ乗り場まで下山していきます。山荘からロープウェイ乗り場の登山道上でも多くの登山者とすれ違い、今日はどんだけ登山者が山に入っているんだとびっくりしました。

そういうわけで、最高の天気の下、西穂高岳に登頂することができました。

お読みいただきありがとうございました。



2016年3月11日〜12日




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