穂高の春2013(第2部)
入念に計画した登山でも、そのときの山の天候や状況によっては柔軟な対応が必要です。
奥穂高岳へのアタックに向けて心配なのは2カ所ある雪渓の直登。双方とも斜度45度以上ある難所。ここが凍っていてアイスバンになっていると、通常の冬山装備の人はほぼお手上げ。
なので、予定を急遽変更して2日目に奥穂高岳へアタックし、3日目は下山のみとします。
10時41分
まずはアタックに向けて一番重要な事。
腹ごしらえ
これ重要です。
軽量化重視のためその他の具材はありません。っていうかこれ本当は緊急時非常食で持ってきたラーメンなんですが、想定外出費があった関係で山荘で軽食を注文するのを見合わせたという情けない結果なんです・・・
(この写真は夕方に撮ったのでタイムラグがあります)
さて、穂高岳山荘から奥穂高岳に登る場合、まず写真中央の岩場を登ります。ここははしごを使い一気に高度が上がりますので慣れていても恐怖感は否めません。
とりわけこの時期はアイゼンを履いた状態で岩の上を歩きますので、慣れていないと難しいです。
岩場を登ると今度は写真の上の方に見える雪渓を登ります。2カ所ある雪渓の最初の雪渓です。ここで滑ってしまうと写真の右下の方へ一気に滑落てしまいます。
11時41分
最初の雪渓を登りきると一気にこの高度になります。
写真右手には槍ヶ岳、北穂高岳、そして中央に堂々と涸沢岳と3,000峰が連なっています。
さて、この少し手前で頂上から下りてきた3人組とすれ違いました。様子を聞き、結果として登頂可能であると判断します。
11時54分
そして、しばらくは稜線を歩いて行きます。
夏ルートとほぼ同じコースですが、去年と比べて雪が少ないからなのか、去年来たのが早朝だったからなのか分かりませんが、ズボッと穴が開いて股近くまで沈んでしまうことが度々ありました。
11時57分
ジャンダルムが顔を出してくると頂上が近くなってきた証拠です。
風が強くなってきました。
ザックは山荘においてきているので風に煽られてバランスを崩さないように注意します。
12時12分
そして、ついにやってきました。2番目の雪渓。
写真の左上に向けて登って行きます。
写真では分かりづらいですが、最終的には45度以上の斜度になります。
ちなみに、この雪渓は写真の右下に向けてずっと続いているので、万が一滑ってしまった場合は数百メートル止まる事無く真っ逆さまに滑り落ちてしまいます。まず助からないでしょう。
今回、すれ違った登山者の多くは話を聞く限りここで断念した方が多かったです。
先ほどお会いした3人組はロープを張ってクリアしたようです。
自分は両手にアイスバイルをしっかり握りこの雪壁に挑みます。アイスバイルはお世辞でも軽いとは言えない代物です。ですがこの瞬間のために、そうこの瞬間だけのために重い登攀用具を持ってきたのです。
本来、垂直の氷壁を登るための登攀用具であるアイスバイルは、奥穂高岳登山者を拒む最後の難関である雪渓を確実に捕らえて行きます。
この絶対的安心感に支えられながら難関をクリアします。
そしてこの難関をクリアした後に待っていたのは・・・
12時37分
奥 穂 高 岳 登 頂
少しモヤが掛かっていますが、北アルプスの峰々を見渡すことができます。
ご存知のように標高3,190mの奥穂高岳は日本で三番目に高い山。
ほぼ全てを見下ろす感覚は素晴らしいの一言に尽きます。
ジャンダルムの姿はいつ見ても圧巻です。
いつかはあのトップに立つ事ができるでしょうか・・・
上高地の河童橋から切り立った穂高の峰々を見て、多くの人は感動します。「白い世界へ①」の最初の写真です。
そして今、逆にその穂高の最高地点から河童橋を見下ろします。よく見ると赤い屋根の建物が並んでいますがその辺りです。
そして下山を開始します。
写真は頂上よりこれから下山して行くルートを撮っています。
写真中央の巨大な岩(コブ?)の裏手が先ほどの大雪渓です。
登るときより下りるときの方が緊張感があります。慎重に慎重を重ね、どんなにゆっくりでもかまわないので確実に下りて行きます。
無事に山荘まで下りてきました。
今日は穂高岳山荘で宿泊。宿泊者は4名、もしかしたら素泊まりの方もいたかもしれませんが。あとテント張っていた方が1名。
夕食はもの凄いボリュームで大変満足しました。こ、こんなにサービスしていいんでしょうか、っていうくらい!!
食後に外に出てみると湿度のせいか太陽が凄い事に・・・
明日は下山だけなので、この後「太陽のロビー」で岳を読みながらすごしました。あ、ちなみに今回食事はこの太陽のロビーで食べました!!
最高〜、贅沢過ぎ〜!!
04時50分
翌朝、下山日です。
やはり雲が多く、この位置になって太陽が顔を出しました。
06時51分
下山時はいつも「帰りたくないな」と思うのですが、今回はなおさらです。
「白い世界」確かに美しく素晴らしいです。ですが美しさの一方で多くの悲しみがあるのも事実です。
だからこそ崇高な気持ちになるのかもしれません。
具体的な表現は避けますが、全ての人がこの白い世界を見たいと思い、実際に山に登り、そしてその願いが遂げられたわけではありません。
だからこそ自分のような者がこの崇高な世界に居る事が許されているのだろうか、そんな感覚にもなってしまいそうです。
私は今年も穂高の白い世界に来る事が出来ました。
今年も真っ白な奥穂高岳の頂上に立つ事が出来ました。
2013年5月11日〜13日
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